仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「動き始めてから、考えよう」
山田 拓が語る仕事--2

就職活動

0から1を作るために

仕事の基本で磨かれた


工学を学んでいながらメーカーなどに就職しなかった僕は、研究開発のような仕事より、目の前の人のリアクションが見える仕事をやってみたかった。それで外資系コンサルティング会社に就職しました。採用は日本で、入社直後に米フロリダ州での3カ月間研修が準備されていました。コンサルティングは、得意先の経営課題に向き合い、それを解決しながら業績向上に貢献する仕事です。これは家庭教師と似ていると思いながら、厳しい研修に参加しました。
 
この仕事は僕たち自身が商品そのものなので、必要な武器を身につけるトレーニングは充実していました。もう一つ経験したのは、仕事やプロジェクトを成し遂げるための方法論です。これは仕事の基本と言えるかも知れません。まず、仕事のゴールは3カ月後か半年後か、もしくは3年後なのかと時期を明確にすること。次に、そのゴールを描くためにスケジュールを大きく三つに分けて、具体的に必要な人、モノ、お金をどうそろえるか。道しるべを考えて実地経験を積んでいくのですね。
 
僕は2社のコンサルティング会社で5年ほど勤めましたが、会社から与えられたバイブルをベースに自分の成功や失敗も加え、自分なりの仕事バイブルを作りました。ただ、不得手な英語では、相手から電話を切られまくって苦労しましたけど(笑)。岐阜県・飛騨の里山を外国人観光客に楽しんでもらう現在の仕事もゼロから始めましたが、さてどうするかと行き詰まる度、この自分のバイブルをよりどころに考えてきたんです。
 
どのような仕事でも、就業するときっと基本が存在する。言葉で聞くと当たり前に思えることも、自分なりに消化しておくと後になって利いてきます。

米同時多発テロで世界を考えた

グローバルな世界で働きたい。それは若い頃からの僕の夢であり、アメリカのコンサルティング会社で2年ほど働いて、次はヨーロッパだとフランス企業への転職を決めました。そんな時です。2001年にあの米同時多発テロが起きました。僕は現場のニューヨークにいたのではなく映像をテレビで見たのですが、崩壊したビルには前に所属していた会社も入っていました。

アメリカ生活で人種、宗教、貧富の差などを知り、多様な人々が存在する世界ではそういう行動に出る人もいるのだろうと驚きました。その頃の僕はほとんど日本人とアメリカ人くらいしか知らず、だから欧州の会社に転職を望んだのです。でも、グローバルな世界とは先進国だけではない。そう感じ、これまでの体験だけでは薄っぺらいと、南米やアフリカを中心とした放浪の旅に出ることを考えました。

フランス企業の仕事を2年半ほど続け、僕は退職して世界を見て歩く旅を決行します。少しずつ貯金もしておき、勤務先を辞め、妻となる女性と一緒にテントを担いで長い行脚に出ると告げると、周りからこぞって反対されました。でも会社にひもづいたままではその影響を受けてしまい、ものの見方が僕の正直な視点にならないと判断したのです。こうして、525日に及ぶ放浪の旅が始まりました。(談)

やまだ・たく ●(株)美ら地球(ちゅらぼし)代表取締役。「SATOYAMA EXPERIENCE(里山体験)」主宰。1975年奈良県生まれ。横浜国立大学工学部卒業、99年同大大学院工学研究科修士課程修了。米国系経営コンサルティング会社勤務などを経て、29カ国、525日間世界を旅する。2007年美ら地球設立、10年「飛騨里山サイクリング」事業開始。著書『外国人が熱狂するクールな田舎の作り方』。
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