仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「人生の後半戦も、僕らしく」
大江 千里が語る仕事--4

就職活動

今日も米国からジャズを

ビジネスと音楽を両手に

アメリカのジャズ大学を卒業する前に、これから未来に向かってやり遂げたい目標を四つ、箇条書きにしました。①自分自身によるジャズ曲を生み出しアレンジする②自分のバンドを作り、ニューヨークで有名なジャズのマネジメント会社と自分で契約してコンサートをやる③自分のレーベルを立ち上げる④ビザを申請し永住権(グリーンカード)を取得する。
 
そして大学卒業の2012年、僕は「Boys Mature Slow(男子、成熟するには時間を要す)」というアルバムでジャズデビューし、それを機に新たな個人レーベルを立ち上げたのです。ここで目標を二つかなえることができ、うれしかったですね。それから自由に仕事をするため、苦労して1年掛かりで永住権を取得。ニューヨークで僕のジャズを育てようと腰を据えてから、クインテットやビッグバンド、そしてトリオやボーカルを採り入れた曲など様々なアルバムを作り、コンサートも実現していきました。
 
でも、一人でビジネスをするって大変なことだと痛感しました。例えば、日本ツアーでビッグバンドのメンバーと出演する。マネジャーも会社の人間もいないから、彼らが帰る時には僕が一人ひとりの部屋ヘ行って小切手でギャラを支払い、送迎バスが点になるまで手を振った(笑)。 新曲の書き下ろし、演奏、ツアーの手配、ギャラ交渉もする。CDの注文には一枚一枚メッセージをつけ、宛名を書いて送っていました。でもそれが喜びなのです。
 
ただそうなると、ピアノの練習時間がビジネスに侵食されていく。どこかで「やれることしかやらないと見切る」ことの大切さも学びました。日本でシンガー・ソングライターとして活動していた頃は、多くのスタッフが陰になり日なたになりして僕を支えてくれていた。今は、かつての仕事チームの方法や知恵、技術を参考にしながら何とか「一人ビジネス」が回っています。

自分に課した仕事のルール

僕はジャズ留学の直前まで、お金の苦労をほとんどせずに音楽人生を歩いてきました。しかしニューヨークでは一転、高い学費と生活費がのし掛かります。どうやって生き残るか。お金との向き合い方を訓練する日々でもありました。
 
アメリカで起業すると決めた時、それまでの経験からルールを作りました。まず利益の出ないことはやらないし、できることは全て自分でやる。志は高く、納得のいくいい音楽を作る。宝物である音楽仲間と音楽環境には投資を惜しまない。一人ひとりのお客様に向き合う精神を徹底する。そして最後は、自分にできないことは信頼できるプロに任せる。前述した時間の使い方、「やれることしかやらないと見切る」というルールと近いですね。大事にしたい柱を倒さず、有限である時間やお金を活(い)かす僕なりの考え方です。
 
47歳でそれまでのキャリアを捨てるという突然の行動に出た、あの忘れがたい冬から11年が経ちました。赤いちゃんちゃんこを着る年齢になっても、底抜けに笑っていられる音楽をやってきたか。きっと、それを判断してくださるのはお客様ですよね。そして、僕がサバイブ(生き残ることが)できたとすれば、ひたすら音楽に本気だったからと言えるかも知れません。(談)

おおえ・せんり ●ジャズピアニスト、音楽プロデューサー。1960年大阪府生まれ、関西学院大学卒業。在学中にシンガー・ソングライターとしてデビュー、多くのヒット曲を生む。2008年ジャズ留学のためニューヨークに渡る。12年自身のレーベルを設立、初アルバム「Boys Mature Slow」でジャズピアニストとしてデビュー。現在もニューヨークを拠点に活動。最新アルバム「Boys & Girls」。19年1月にコンサートツアーを予定。
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