「自分らしさに率直な仕事を」
水原 希子が語る仕事--4
自分に「イエス」と言って
「好きでたまらない」を追う
モデルを続けるうちに映画出演という思いがけない仕事を頂き、それをきっかけに俳優の仕事やテレビ出演などの依頼を頂くようになりました。この2、3年は、ステレオタイプな思考から離れて人と人とが深く結びつくようなテーマの作品に参加することができ、また自分としても共感できる役に出会えました。
少しさかのぼりますが、4年ほど前にアメリカのエージェントと仕事をさせてもらう機会を得て、ロサンゼルスに3、4カ月滞在したことがありました。ちょうどファッションやエンターテインメント業界でジェンダーやダイバーシティーを大切にする空気が高まり始めた時期です。
私もオーディションに臨み、海外で活躍の場ができたらとうれしかったのですが、アジア出身、新人の女の子として紹介されることがほとんどで、10年近いキャリアや個性は考慮されず、アジア枠のパズルのピースとして扱われました。人は必ずどこかに仕分けされるんだと悲しかったですね。
その息苦しさを一回全て忘れようと、私は女友だち2人と一緒にカリフォルニアの自然を求めて旅に出ました。誰もいない大自然の開放感は素晴らしく、私たちは裸足になって岩を登り、草原を走り、服を脱ぎ捨てて自然に湧き出ている温泉に浮いて楽しみました。のびのびとはしゃぎながらこの情景に似合う化粧をし、旅の記念にと互いに裸の写真も撮り合って、人間も自然の一部なんだと本当にすがすがしく自由な気持ちに満たされました。
そしてこの旅で、「この感覚は本物だ」というインスピレーションを受けたのですね。自分が心から楽しんでいると、写真の表現など次々にアイデアが浮かんでくるからです。人は自分でやりたいことを分かって生を受けるわけではないから、本気で自分の個の力を意識していないのかも知れない。それを見つけるために、心底楽しいと感じることを追いかけて欲しいと思います。
やりたいことには力が宿る
大自然の中で迷いから解き放たれたことがきっかけで、私は帰国後すぐに個人事務所を立ち上げ、自分のファッションブランドもスタートさせました。やりたいこと、好きでたまらないことが仕事のパワーだという確信が気持ちのコアにあり、この4年余りも頑張りが利いています。
また私は、コロナの影響で人々が自分の人生や、生と死に思いを巡らせているのではないかと感じています。命は永遠ではないから、みんなもう一度自分のやりたいこと、本当の欲求と素直に向き合おうとしているのではないかと。昔からこう言われてきましたよね、「好き放題やって食べていけるか」と。それは本当なの? 私はその問いに「やりたいことをやっても、ちゃんとご飯を食べていけるよ」と応えられる存在になりたい。
私たち一人ひとりを今までのカテゴリーに分類するなんて無理(笑)。だからこそ、周囲に流されない「自分がやりたいこと」を探し続けてくださいね。それがあなたにとっての本物なら力が湧いてくると思います。(談)