「使命感を持ちチームと進む」
石山 アンジュが語る仕事--4
若い世代から未来戦略を
私たちは社会に役立ちたい
二つの企業を経て、20代半ばで「シェアリングエコノミー協会」に籍を置いて活動を始めました。シェアリングは、困った時に「お互いさま」と助け合う昔の文化に似ており、その視点を現在のテクノロジーを使ってもう一度作ることで、行き詰まった課題を解決できると考えています。例えばある地方の過疎地では、「交通弱者」や「買い物弱者」のために自治体がライドシェアサービス会社と協力し、マイカーで移動する人と車を持たない人をつなぐ「相乗り交通」という取り組みで住民を救っています。他県でも、農村の忙しい子育て世代に手を貸せる人をマッチングさせるサービスなど、様々な成功例があります。
つまりシェアリングの活動は、利害で動くのではなく、今、社会で困っていることを分かち合い、支え合う道を目指しているのです。上の世代からは「それは理想論じゃないのか」と言われるかも知れません。でも、私も含めて今の若い世代には、自分の事業や仕事について、目先の利益や利便性を優先するのではなく、これから自分たちが生きる50年を見据えて、本当の豊かさとは何かということを問い直している人が多いと思います。従来のように仕事とプライベートをはっきり分けるのではなく、逆にその境目をなくして、心地良く安心な未来環境を作るのが仕事なのだと変わってきているようです。
こうして大きく社会が変化していく時、では私はどのように役立つことができるのかと多くの人は考えるでしょう。学生さんからはよく、英語が上達すればいいですかと聞かれますが、今は英語学習に時間を費やす必要はあまりないと思います。
私の場合は、シェアリングの記事などを書いたら、シェアサービスを通じて中国語と英語が得意な人に依頼し、それをウェブサイトに公開します。そんな私のスペシャリティー(得意分野)は、立場や世代が異なる人をつないだり、対話の機会を作ったりすることだと意識しており、語学ではないのです。色んな人と「得意」をシェアできる、そんな「これだったら私に任せて」という得意分野を持てば、各国の有識者や専門家ともつながれる時代にいるのです。
日本が先駆けるシェアリング
私たちの協会のおよそ5年間の活動を経て、シェア事業は普及してきました。幸運なことに、かつて日本にあった「八百万(やおよろず)の神が宿るという精神性」が背中を押してくれたからだと感じます。それは西洋的な「自分と他者は切り離された存在」という思想とは別の、「自然も人も境界線なく既につながっている」という東洋の思想です。もちろん世界のどの国でも助け合うことはありますが、日本ではそれが文化として根付いていると思うんです。
シェアリングエコノミーは、新しい経済として海外から近年入ってきたように思えますが、実は、私たちの国にその思想が眠っていました。ですからそれを、今後は国内だけでなく新たな形で世界にも一層役立てていきたい。私たちの祖父母世代に残っている「お互いさま」の記憶を掘り起こしていけば、次は自分たちの未来にシェアリングを手渡せる。そんな世界観の同じ仲間が、チームとなって働く時代だと思います。(談)