仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「動こう、今、心惹(ひ)かれることに」
小泉 今日子が語る仕事--3

就職活動

自分に揺さぶりをかけよう

もう、守りに入っていませんか

10代の歌手時代から、私は様々な音楽仲間や友だちを得て、ポップ音楽やサブカルチャーを吸収し続けることができました。一つ新しい出会いがあると、そこからまたグイグイと未知の世界が広がっていくのです。やがて歌だけでなく演技にも挑み、エンターテインメントが持つ、人を元気にする力を信じて、20代、30代も充実した仕事に巡り合ってきました。
 ただ、忙しくしていても、誕生日だけは静かに一人でこれからを考える時間にしようと、それを習慣にしました。そんな40歳の誕生日前後のこと、近い年齢の友人たちが皆「そろそろ人生折り返しだ」と言うのです。今まで、ずっとひたすら真っすぐな道を頑張るものと思っていた私は、「えっ、折り返すの?」と拍子抜けしました。来た道を戻るなら、旅行の帰りのようにゆとりで脇見ができるからいいなとホッとしながらも、80歳くらいまでのゴールをどうしようかと思い始めたのです。
 やがて、少し先輩の女性たちに、年令を重ねて変化する体や仕事のことなど赤裸々な話を聞き、『小泉放談』という本を出したのですが、次は男性の声も聞きたいですね。男女とも社会で仕事をしていく上で苦労はありますが、「働かなくてはいけない」「ここで頑張るべきだ」といった捉え方をするのは男性の方がより多いのではないかと私は思うからです。じゃあ、元気を取り戻すにはどうすればいいのか。私は、積み重ねてきた経験を一回バラバラのパーツにしてしまえばいいと考えています。
 例えば仕事だけではなく、「昔はロックが好きで楽器に夢中だった」「放り出した趣味がある」「今も語学を学びたい」など、幾つもの自分を発見し、普段着の冒険心を取り戻していくのです、少年みたいに。そういう私も、俳優の仕事で取材を受ける時などに、自分らしくない大人っぽい服装にして守りに入っている自分に気づき、「私ってもっと自由な人間じゃなかったっけ?」と、髪にピンクの染色を入れてライブをしたこともありました。

人への応援を諦めない

年令を重ねてきて、折り返すって何をすることだろうか。私にとってそれはプロデュース業だと思い至り、50歳を間近に起業しました。なぜかと言うと、私自身が大人たちの絶え間ない応援によって育ててもらったからです。私が若い時、友だちとだけ話していたらたどり着かないような音楽や文学、映画などを教えられ、「じゃあゴダールの映画を見てみよう」「ガルシア・マルケスを読んでみる」と背伸びをしました。私が世間と少しずれたことをしても、目利きの大人がはっきり「それでいい」と褒めてくれたことも一度や二度ではありません。
 大人になった私も、こんなふうに若い人に自信を持たせてあげたい。プロデュースを通して、私が受け取ってきた多くの恩を循環したかったのですね。今、社会でしっかり働いている大人たちには、不安でナイーブだった昔の日々を思い出して、若い人に「いいね」と本気でもっと言ってあげて欲しい。私のイメージは、世代を超えた「文化町内会」(笑)。どんな仕事でも、成長を見守られている喜びって大きいものだからです。(談)

こいずみ・きょうこ ●(株)明後日代表取締役、女優、歌手。1966年神奈川県生まれ。82年歌手デビュー。ミリオンセラー「あなたに会えてよかった」など多くのヒット曲を放つ。また女優として映画、ドラマなどの主演、出演多数。2015年(株)明後日を設立。以降は舞台、音楽、映画などプロデュース業にも従事。近作映画『ソワレ』ではアソシエイトプロデューサーを担った。著書に『小泉放談』ほか多数。
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