仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「生涯学ぶと腹をくくろう」
中原淳が語る仕事--2

就職活動

迷う時は孤独になるな

決断の支えは、つながりにある

必死に勉強して東京大学に入学した僕を待っていたのは、数百人がすし詰めの大人数教室での一斉授業。今ではこういう授業は少なくなっていますが、これには絶望しました。ちょうどインターネットが入ってきた時期だったので、授業を受けず情報教育棟にこもり、プログラミングなどをして最初の2年間をやり過ごしました。僕の人生は、なぜこんなに教育や学びに翻弄(ほんろう)されなきゃならないのか。その怒りや疑問が消えず、やがて「人間の学び」を研究するようになっていきました。
 
人間は本来クリエーティブな存在なのに、偏差値や他者からの評価などの物差しに翻弄され、萎縮していってはいないでしょうか。偏差値の物差しで自分の将来を決めて、自分の人生の分岐を他人に任せたり、自分で決めていなかったりする学生もいます。彼らは物心ついたら塾に行けと言われ、他人と比較され、自分の偏差値に見合った大学に入っただけだというのです。更にその先には、大学の偏差値と釣り合うらしい社格を持った企業に就職し、新入社員研修などを経て配属され、自分で一度も決断しないまま30代になるかも知れない。
 
僕は実は年に3、4回は落胆することがあります。例えば30〜40代のビジネスパーソンに研修などで会い、深い話をしていくと「私は恥ずかしながら、自分のこれまでの人生で自分で決めたことがない」と言われるのです。より多くの人々が、自分の人生の選択を自分で決められるような世の中をつくりたいですね。
 
矛盾するようですが、自分で決断する時は、他人から意見を聞き、フィードバックをもらうことです。つまり自己で決断する時こそ「孤独」にならないこと。重大な決断をする時こそ、自分がどういう状況にあるのか正しく認知することが大事です。自分が選ぼうと思っている選択肢は、他人から見てどのように見えるのか。それを確認しつつ決断することです。なぜなら自己決断にはリスクもあるからです。人生で大切なことを決める時には「絶対に孤独になるな」と僕はいつも言っています。

緊張屋さんと安心屋さんを確保

よく映画やマンガなどを見ていると、自己決断をしている主人公で孤高な人ってあまりいないと思います。メンター(助言者)やフィードバックをしてくれる存在など、助けてくれる人が登場する。そういうつながりの中に自らを置くことが、実は自己決断ができる強い主体をつくるのではないでしょうか。
 
僕自身も、何もかも自分で決められる人間ではありません。どちらかと言うと惑いやすく移ろいやすいとよく分かっているので、支えてくれる人や自分を律してくれる人とのつながりがありさえすれば、何とか自分の強さを発揮できるかも知れないと考えてきました。助言をくれる存在は大きく二つ。弱気になって「このまま手を抜こうかな」と言おうものなら、「このままじゃダメになっちゃうよ」と客観的な意見をくれる緊張屋さん。もう一方は「よくやってるよ」と温かく励ましてくれる安心屋さんです。そういうつながりこそつくっていってください。
 
もちろん、あなた自身も誰かに貢献する存在になって欲しい。直接会えない今の状況なら、オンラインでつながることができるじゃないですか。(談)

なかはら・じゅん ●立教大学経営学部教授。博士(人間科学)。1975年北海道生まれ。東京大学教育学部卒業。大阪大学大学院人間科学研究科で学び、米マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学准教授などを経て現職。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発、組織開発を研究している。著書『働く大人のための「学び」の教科書』ほか多数。新刊は『サーベイ・フィードバック入門―「データと対話」で職場を変える技術』。
関連記事

ご購読申し込み

PR版請求

試し読み申し込み

学割申し込み

新聞プレゼント

朝日新聞デジタル

お引越しされる方

学情ナビ

就活ナビ

朝日新聞採用

仕事力

PAGE TOP