仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「生涯学ぶと腹をくくろう」
中原淳が語る仕事--4

就職活動

「今日の背伸び」を明日の日常に

変わる、成長する楽しさを知る

これから先の仕事人生は明らかに長くなり、80歳くらいまで健康で働くような社会になるでしょう。しかし世の中の変化は速く、かつて身につけたスキルは思わぬ速度で「古典」になっていく。とすれば僕らは、若手もミドル世代も変化から逃げずに、食いっぱぐれない手立てを考えなくてはなりません。ただ、それは決してつらいものだけではなく、新たな自分の可能性を見つける喜びもあると僕は思います。

大切なのは日常に埋没しないことです。ささいなチャレンジでも試みる、社外の人にも積極的に出会うなど、行動して自分と社会とのズレを客観視することです。そこでは「違和感」や「もやもや」を感じるかも知れませんが、人はそうした契機から自分を見つけられるのだと思います。

更に、自分の勤務先を「学び舎(や)」にする「日常業務の背伸び」も提案したい。それは、現在自分の能力で十分にこなせている仕事よりも少しタフな業務に挑む方法です。例えば、会社が伸びる方向に沿った前例のないプロジェクトに手を挙げてみる。今まで自分が獲得してきたやり方を変えていくのは面倒で大変だけれど、中長期的に見れば、自分自身をリフレッシュしながら世の中の流れについていき、変化していく方が実は楽しい。人間は成長したい存在だからです。

ビジネスセミナーなどに通った人なら、その参加経験を生かして自らコミュニティーを立ち上げてみるといい。僕にも経験がありますが、組織を超えて学び合う場をつくりました。仲間集めの告知をし、場所を押さえ、会費をもらいと少し手間はかかります。でも人が人を呼び、情報も集まってくる。面白くて刺激があります。もちろんオンラインでもコミュニティーは可能で、デジタルスキルが苦手でも、自分がやりたいことなら一歩ずつクリアしていけるはずです。そして手にしたスキルで人に何かを教えるのも、自分自身が深く学ぶ機会を生み出せます。

社会人には、学生のような学びのカリキュラムは用意されていませんが、だからこそ自分を様々な環境に置いてみて欲しいと思います。

離れた世代からも学ぼう

僕は、論理的思考力は若い人たちにまだ負けていないという自信があります。でもきれいなプレゼン資料のつくり方や見せ方、デザインスキルなどは全部負けている(笑)。そこは素直に認めて教えてもらえばいい。

オンキャンパスで会うのが難しいこの春、僕は「日本で一番オンラインで学ぶゼミになれ」と、連日朝からウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」を使って学生と授業やミーティングをしています。人事や人材開発のゼミなので、出した課題は「最新のトピック、その背景となる理論やデータも調べなさい」「それを60分間で伝えるオンラインメディアのワークショップをつくりなさい」です。ただし、伝えるだけなら誰でもできるので、「面白く学べる、これは一本取られたな!」と思わせるくらいのことはやれと言っています。彼らの背伸びも楽しみです。

こういう若い世代が次々と世の中に出てきます。互いに仕事観の違いが立ちはだかるかも知れませんが、それも学びの機会じゃないですか。学び続け、変わることをいとわなければ、何ら怖いことはないのです。同時代を楽しみましょう!(談)

なかはら・じゅん ●立教大学経営学部教授。博士(人間科学)。1975年北海道生まれ。東京大学教育学部卒業。大阪大学大学院人間科学研究科で学び、米マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学准教授などを経て現職。「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発、組織開発を研究している。著書『働く大人のための「学び」の教科書』ほか多数。新刊は『サーベイ・フィードバック入門―「データと対話」で職場を変える技術』。
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