仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「『何とかしたい』課題に粘る」
中村 有沙が語る仕事--1

就職活動

ロボットみたいな新人!?

口べた克服のために営業職へ

どちらかと言うと引っ込み思案な性格でした。コミュニケーションが苦手で友達もわずか。いつかは変わりたいと思い続け、就職を機会に自分の口べたを変えられる環境に行こうと進路を営業職に絞りました。就職活動ではベンチャー企業を中心に回り、IT系を外して、もっと暮らしに密着したプラスアルファを与えられるような業種を希望しました。

出会ったオアシスソリューションは、当時はまだ水道事業だけを営む50人ほどの堅い業態でした。私は大学の専攻が技術系ではないし、知識も全くありませんでしたが、会社は30代の社長が「新しい事業をどんどん生み出したい」と語る若々しい社風で、堅実さと挑戦の両極端の姿勢が面白いなと感じました。でも大学の同期は大手企業や公務員志望が多く、父は大手メーカーで新卒から何十年も勤め上げたタイプ。私の選択案は強く反対されました。

ただ1カ月以上かかって繰り返し父を説得する中で、葛藤もあった自分の気持ちが次第に固まっていきました。苦手なコミュニケーションの克服がしたいし、更に私は、いつか新規事業を起こしてみたい。その可能性を追いかけられる会社を選びたかったのですね。人と違う進み方でもいいから、「自分の選択を正解にしていこう」と今でも思っています。

入社はできたものの、やはり見知らぬ現場は大変でした。コミュニケーションもぎこちなく、「表情の硬い、学歴だけ高い子が来たけど大丈夫?」「ロボットみたいな新人だな」と周囲を戸惑わせていました(笑)。会社の業務は、マンションの水道管の劣化調査とメンテナンスの提案・実施です。最初の1年間は先輩について回り、みっちりと教えてもらいました。営業のロールプレイングもあり、話す内容はもちろん、「その表情は変だよ」「今の表現は失礼に聞こえるよ」と、本当に初歩の会話からです。「何とかチームで育てよう」という現場の温かい気持ちに支えられて、根気よく鍛えてもらいました。

社長に直談判、人事部立ち上げ

話すことが苦手だったせいもあって営業成績で芽が出るまでに時間がかかりましたが、入社3年後にはようやく営業力がつき、オアシスソリューションの営業で年間成績ナンバーワンを獲得できました。そして私は社員数が七、八十人に増えた頃、社内に色々と人事面での課題があると感じ始めました。例えば研修制度がなく、全てがOJT(現場訓練)では非効率だし、採用・教育・評価を一気通貫で行う部署が必要ではないかと。その思いを社長にぶつけてみたのです。

「それなら、人事部の立ち上げをやってみないか」。それが社長の答えで、全く初心者の私と後輩の2人だけの部署ができました。

会社の重要なポジションが自分たちに任せられた以上は、きちんと結果を出したい。初めての分野なので何冊もの本や資料で基礎を学びました。それ以上に多くの時間を費やしたのは、様々な企業の人事部を紹介してもらって教えを請うことでした。ありがたいことに他社の方々が、未経験の仕事を始める私たちに手ほどきをしてくださるのです。師は外にもいる。この時から、新しい仕事に向き合う際は、いつもこのプロセスを通ってきたように思います。(談)

なかむら・ありさ ●(株)オアシススタイルウェア代表取締役。1986年生まれ、横浜市出身。東京大学経済学部卒業後、水道工事業を営む(株)オアシスソリューションに入社。4年間営業職に従事した後、同社に人事部を立ち上げる。人事部在職中に社内の技術職ユニフォームのリニューアルプロジェクトに携わり、「スーツに見える作業着」を約2年かけて開発。事業化し、2017年12月から現職。
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