「『何とかしたい』課題に粘る」
中村 有沙が語る仕事--4
「任せきる」で開発力を
アイデアや直感は試していく
若手技術職の採用を増やすために、カッコいい作業着を作る。それが人事部を立ち上げ後、私たちが取り組んだ計画でした。試行錯誤して完成させた「スーツに見える作業着」は、フィットして動きやすく、タフな機能性が驚かれ、やがて様々な業種の方からご注文を頂くようになりました。これだけご要望があるならと事業化が決まり、経営経験のない私が代表を務めて新会社がスタート。
2017年12月の創業から、まだ2年半ほどです。現在も企画、広報、法人営業、通販サイトのマーケティング、それに在庫管理担当数名と、決して社員は多くありません。アパレル経験者も少なく、それ以外は皆新卒2、3年目です。この6月に初めての実店舗をオープンしたので社員はフル稼働の数カ月ですが、私はこの間に産休、出産、そして現在も育休中。それでも会社は元気に稼働していて本当に頼もしいチームです。
これには親会社の社長から学んだ目標設定がとても役に立っています。それは3カ月や1年、3年、10年などと区切って、実現するゴールを必ず具体的にしておくこと。かける時間とその時の結果をできる限り鮮明に描けということでした。会社全体の目標設定は私の仕事ですが、担当者一人ひとりも自分が目指す中期、長期の未来を描きます。その目標に対してどう動くのかは、「自由に好きにやってね」と任せてきました。
例えば広報担当は一人で営業も一手に引き受けてくれています。私が「こうしたら?」と提案する必要はありません。なぜなら彼の方が私よりずっと数倍も長く、深く広報と営業のことを考えているから。出てくる案も面白い。他のメンバーも全く同じです。今、私は在宅で送られてくる日報などには目を通しますが、後は全て担当者が走ります。
失敗したらどうするか? 「良かったね」と言います。どんどん案を出して実行し、失敗したら修正点も早いうちに見つかる。すぐに次へ進めるからスピードが生まれるのですね。それが開発力だと思います。
強くしたい、社会へのまなざし
産休に加えて新型コロナウイルスによる自粛期間があり、長い在宅体験でしたが、今までにない価値も感じました。赤ちゃんの泣き声が聞こえる生活と仕事が、日々の時間の中で融合しやすくなってくるのです。かつては仕事とプライベートって場所も時間もくっきり別だったのに、交じり合ってくると、ふと、暮らしに欲しい物や心引かれるサービスなどを思いつきます。生活者の視点が鍛えられ、それをいい仕事に生かせるという期待が膨らみますね。
更に、出産を経て自分の仕事に対する考え方も変わってきました。「子どもが生きていくこれからの100年に私は何ができるか。もっと良い100年にできないか」というように。これまでは、会社を成長させたいとか、商品がこう伸びていって欲しいとか、自分に近い所までしか目線が届いていませんでした。でも、これからは私たちの仕事が人々にどう役立っていくか、そういう社会へのまなざしを強くしていきたい。
未来を考える、理想を追う、社会の課題へ向かう。そんな長期計画もぜひ、仕事に加えたいと思います。(談)