「新しい価値の根っこをつかもう」
中山 亮太郎が語る仕事--4
水を得た独創的なものづくり
蓄えた日本の技術は国宝級
人々の選択肢が多様化しユニークなものが欲しい今の時代に、大量生産が主流のままでは日本の「本当によいもの」の普及は厳しいのではないか。もっと少資本でも商品が作れる魅力ある手立てはないか。そんなことを考えていた僕が、2013年にクラウドファンディング事業の社長を引き受けることになりました。数百のメーカーに「新製品作りの資金をクラウドファンディング調達で」と営業しましたがほぼ全滅。日本ではまだ寄付を募る仕組みというイメージが強かったのでしょう。
思わぬ苦戦が続きましたが、やがて「製品の試作段階でその魅力情報を届け、完成を応援して買ってもらう」という新たな価値に気づかされ、それを後々僕たちは「応援購入」という独自の言葉で位置づけ従来のクラウドファンディングとは概念を変えました。構築したのは、今までにないアイデアや技術が光る試作品を紹介し、その完成品が欲しいので応援購入したいという人が出会えるマッチングサイト「Makuake(マクアケ)」です。売れるかどうかテストできるなら試してみたいと取り組む作り手が水を得た魚のように動き出し、顧客を得てから作るという新しい手法に踏み出していきました。
例えば初期の頃には、世界を視野に入れた時計メーカーや地方のファッションメーカー、老舗酒造、自転車とバイクのハイブリッドバイク、また映画『この世界の片隅に』制作など多くの成功例が続出しました。人が欲しいと思えるものを作る原則こそ経済の引き金だと考えていたので、方向は間違っていなかったという確信があります。現在もとがった商品やサービス、体験などが続々と加わっていますが、もっともっと充実したサイトの仕組みを考えなくてはと思っています。
よりこだわったものというのは、大量生産の製品と比べてその違いはミリ単位かも知れない。でも、そんなユーザーのこだわりに応える細やかな日本の技術力、感性や知識は世界でもトップクラスでしょう。優れたものづくりの仕事力は地方の隅々のメーカーに息づいているし、大手メーカーにも十分に蓄えられていて、その財産は国宝級だと思います。
作り手の元気が広がる社会へ
産業革命以降から人類が長年かけて築いてきた大量流通の効率性は価値のあることでしたが、インターネットによって変わる時が来たのではないでしょうか。今まではメーカーが在庫を確保し、流通させて人が買う流れでした。しかしもうスマホから購入サイトにアクセスしてもらうことで、在庫リスクを取る前に受注できる。「作る」と「売る」の順番が逆転してきたわけですね。
僕たち日本人のDNAには、楽しむ、面白がるといった気質があるのでしょう。それが世界を夢中にさせた。自由に挑戦できるMakuakeというサイトを提供したら、やっぱりチャレンジャーが引きも切りません。うちのビジョンは「生まれるべきものが生まれ 広がるべきものが広がり 残るべきものが残る世界の実現」です。作り手が、よしやってやろうと元気になる社会を目指したい。
かつて僕の同期が「必ずチャンスは来るから刃を研ぎ続けろ」と言ってくれました。自分の今の仕事から何かをつかめということです。この言葉を皆さんにもお伝えしたいと思います。(談)