仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「自分に根差した力を信じる」
根岸 洋明が語る仕事--3

就職活動

顧客の想像を超えていく

自分だけのデニムという価値を

幾つもの業種やファッションブランドで仕事を重ねてきた僕は、10年前に有名なデニムのクリエーター、ジェイソン・デンハムと出会いました。生地、染め、縫製、デザイン、耐久性など彼は執念が宿る「本当のデニム」を作る人だった。そしてその素晴らしいデニムをどう売るか。それが僕の役割になりました。当時、1千円台の商品さえある中、僕が打ち出したのは5万円前後。業界関係者から「売れるわけがない」とバカにされるスタートでした。
 
結果から言えば、その頃2千万円程度だった年商が来年には30億円に到達する見込みですが、それはお客さんと社員の力でもあります。いくら異端児扱いされようとデニムの奥深さを信じ、愛してついてきてくれたからです。デンハムは、量産するために薬品を使って簡単にウォッシュ加工に見せるようなことはしない。自然の染料インディゴを生かし、手洗い、天日干し、サンドウォッシュなどの手仕事で時間を惜しまず作り上げています。加えてデザインのディテールにも凝りに凝った「オタクデニム」なんですね。
 
店頭スタッフは品質を熟知していますが、お客さんに押しつけがましい説明はするなと厳しく言っています。その代わりにデンハムをかっこよく着こなしてくれと。今、商品力だけでは物は売れない。スタイリングや、ブランドのバックボーンも重要です。「これは本物だ」と知ってもらう時間が必要だと覚悟を決めていました。
 
そして戦略的に、まだインディゴの藍色も鮮やかなゴワゴワでシワ一本ない真新しいデニムを販売し、スタッフが伴走してお客さんに自分のデニムを育てていく体験をしてもらう、ということも考えました。1カ月ほどはくとその人なりの動きによって線が入ってくるんですが、「ここに線が入った!」と毎月見せにくる方も。また、路面店の店頭でたらいに水を張って手洗いすることもしてきました。こんなふうに、スタッフの働きとブランドの誇りを持って、お客さんの想像を超える関係性を1年、2年と丁寧に作り上げていったのです。

「誰にとって何が大切か」が原点

デニムは裏切らない。初めはゴワゴワではき心地が悪くても、洗ってはき込んでいくと自分の肌のようになじんできます。でもその時間がない人も多いから、デンハムは技を尽くして、はき込んだようなプロセスを施した本物をそろえる。薄利多売とは違う戦略ですが、別に構わない。やはり本物が欲しい人は気づいてくれました。
 
僕はあれこれと経営の方法に迷いません。なぜなら自分が持っている経営の知識量が少ないと思うからです。いつも、悩み事が出てきたら調べることなく内にこもり、誰にとって何が大切かを考え抜く。そしてある程度答えが見えてきたら、すぐ社員を集め、自分の脳みそをそのまま共有します。そうすると僕たちが皆一つの束になり、今の時代に求められるスピード感を持って、結果を目指していくことができるのです。
 
世にあふれる情報やノウハウに振り回されず、自分自身から生まれてくる答え。それを信じていいのだと思います。(談)

ねぎし・ひろあき ●(株)デンハム・ジャパン代表取締役社長/CEO(最高経営責任者)。1972年生まれ。大学卒業後、ファッションを始め様々な職種に携わり、2009年グラムール セールス(当時)の立ち上げメンバーとしてCOO(最高執行責任者)を務める。11年デンハム ザ ジーンメーカー ジャパン(現デンハム・ジャパン)代表取締役社長に就任、14年からデンハム本国(オランダ)のブランドディレクターも兼務。
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