仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「現状から抜け出す力を探ろう」
パトリック・ハーランが語る仕事--2

就職活動

子どもに助け舟が必要だ

見えにくい貧困を知ろう

両親が離婚し姉が父親に引き取られてから、僕は母と2人暮らしで貧困に苦しみました。10歳から新聞配達を始め、中学生から他のアルバイトを増やして高校生まで家計を助けていたのです。友人たちが当たり前に参加する活動や、誰もが持っている物に手が届かない。悔しかったですね。だから今、7人に1人と言われる日本の子どもたちの貧困問題に無関心ではいられないのです。
 僕は貧しかったからこそ「自分を哀れんで縮こまるな、身につく力もある」と自分自身に言い聞かせて乗り越えてきました。その背景にはサポートをしてくれた大人たちが存在します。一生懸命働いて僕を育ててくれた母はもちろん、うちの事情を気遣ってくれた先生たちも忘れられません。担任は、おなかが空き過ぎて気分が悪くなる僕を察して保健室へ連れて行き、保健の先生は常備しているクッキーと牛乳を出してくれました。アメリカでは昔から格差や貧困が社会問題としてあったから、暗黙の措置だったのかも知れません。
 友人たちの親にも、とても世話になりました。あるお母さんは一人息子の夕飯のほかに必ず僕の分も作り、いつ来てもいいよと言ってくれたのです。また、15歳の僕に優先的にアルバイトを回してくれた友人のお父さんや、いつでも自由にパソコンを使わせてくれた家族もいました。貧乏は悲しかったけれど、僕を助け見守ってくれる「第二の家族」がいた。だから、お金では買えない温かな経験ができたと思っています。
 「子どもを育てるには、一つの村が必要だ」と言われますが、日本では今、その「村」、つまり地域のコミュニティーが機能しているでしょうか。貧困家庭の子でも、スマホを持ち服装もカジュアルっぽく普通なら近隣の住民は気づきにくいですよね。本当は、知っていれば手を差し伸べる人もいるはずです。ただ、子どもは自分からは甘えられない、声を上げられない。このハードルを越えるためには、大人が「もしかしたら困っている子がいるかも」と関心を持つことだと思います。

「どうなりたいのかな」と尋ねて

僕は「将来の仕事は大丈夫か」という意識で子どもたちを見つめたいですね。住環境が悪く、家庭に落ち着いて学習する場がない、あるいは塾に通えないどころか進学を諦めなければならないという子は少なくありません。そして自分を過小評価してしまいがちです。「どうなりたいのかな」と誰も聞いてくれないから、どんな仕事を目指そうかと将来を考える気持ちはしぼんでいることでしょう。
 だから、大人は機会を見て望みを尋ねてあげて欲しい。できれば夢を実現する公的制度や支援策、民間団体などを調べ、充実している道しるべを探してみてください。教育の向上によって、将来みんながしっかりとした仕事に就くなら、それは日本の経済を支える確実な投資になるのではありませんか。世帯状況が条件に合えば、大学の学費軽減や免除なども申請がかないます。僕たち大人は情報検索などで力になることもできるのですよ。
 次回は、若い皆さんにパックン流の面接法や仕事学習の極意をお伝えしたいと思います。(談)

パトリック・ハーラン ●お笑い芸人、東京工業大学非常勤講師。1970年生まれ、米コロラド州出身。ハーバード大学比較宗教学部卒業後、来日。97年に吉田眞とお笑いコンビ「パックンマックン」結成。NHK「英語でしゃべらナイト」など多くの番組で注目される。BS-TBS「報道1930」ほか、コミュニケーションと国際関係などのコメンテーターとして出演多数。近著に『逆境力 貧乏で劣等感の塊だった僕が、あきらめずに前に進めた理由』がある。
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