仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「現状から抜け出す力を探ろう」
パトリック・ハーランが語る仕事--1

就職活動

逆境が僕の心を鍛えた

比べられるから、貧困は悔しい

今、地球上でどれだけの人が絶対的貧困に苦しんでいることか。それを忘れてはならないのですが、同時に先進国と言われる日本の現状はどうか。7人に1人と算出される、相対的貧困にある日本の子どもたちの存在が気がかりでなりません。と言うのも僕自身が子どもの頃、貧困に苦しんだからなんですね。両親が離婚し姉が父に引き取られてから、母一人子一人の暮らしは本当に大変で、僕は10歳から新聞配達を始め、中学生の頃から他のアルバイトも増やして高校生まで休まず家計を助けました。
 何がつらいかって、もちろん毎朝4時前に起きての新聞配達は歯を食いしばるほどの仕事だったし、欲しい物をずっと我慢し続けるのも悲しかった。ただそれに加えて、周囲の友人たちと比較して自分一人だけが貧しいというのが悔しかったですね。これが相対的貧困なのです。みんなが加入していたボーイスカウトに参加できない、アメフト部に入れない。そういう活動は父親のサポートが必要だったし、お金もかかったからです。友人がみんなコンサートに行く、レコードを買う、どれも当時の僕には無理なことでした。
 そんな多くの実体験があるから、今日の日本で子どもたちの貧困問題への認知度がまだまだ低いのは残念です。貧困家庭の収入は塾の費用がないという程度を超えて、お昼ごはんが買えないほどだと耳にします。でもなかなかその苦しさを声に出せないために、日本の相対的貧困は目に見えにくい気がします。どうにか、潜んでいるデータなどを表に出して少しでも世の中の人に意識してもらえたらいい。知ることによって社会で公私の対策が生まれるからです。
 そしてもし、あなたが困窮した暮らしの中にいるなら、自分のことを哀れんで動かないより、そこから得ている力を感じ取って欲しい。いつも我慢していることが多いから、「手に入ったら喜ぶ力」は誰よりも強い。きっと「何かを工夫する力」もつくだろうし、勉強とバイトで時間がなくても「集中力」が鍛えられてくる。これは負け惜しみではないんです。「何とかする」「置かれたここでベストを出してみせる」と僕も自分に言い聞かせて乗り越えてきました。

自分の幸運を数えてみる

苦しい毎日から力を蓄えようと僕は言いましたが、「あなたはラッキーだったんだ」と反論があるかも知れない。でも、僕も言うよ、「あなただってラッキーじゃないか、考えてみようよ」と。家族に愛されていますか、屋根がありますか、靴はありますか、教育は受けていますか、治安は守られていますか、字は読めますか。さらに、あなたのことが好きな友だちはいますか、趣味はありますか、マンガは好きですか、映画は見ますか、お笑いは好きですか。
 もし全部「ノー!」だったらごめんなさい。これから探してください。自分が持っていないものや苦しんでいることに注意を向けるのではなく、まず今手にしているものからスタートする。それは興味でも、好きな分野でもいい。やがて関わる仕事かも知れないと思い描けたら幸せです。僕は面白い話をして笑ってもらうことが好きでした。そうしてここにいるんですね。(談)

パトリック・ハーラン ●お笑い芸人、東京工業大学非常勤講師。1970年生まれ、米コロラド州出身。ハーバード大学比較宗教学部卒業後、来日。97年に吉田眞とお笑いコンビ「パックンマックン」結成。NHK「英語でしゃべらナイト」など多くの番組で注目される。BS-TBS「報道1930」ほか、コミュニケーションと国際関係などのコメンテーターとして出演多数。近著に『逆境力 貧乏で劣等感の塊だった僕が、あきらめずに前に進めた理由』がある。
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