「初めてに、ひるまない」
高田 晋作が語る仕事----3
信じ抜いて事が動く
話題づくりに奔走した1年半
国際的なラグビー大会の日本開催をきっかけに、東京・丸の内の新しいまちづくりを進められないか。2017年ごろ、その発想が当社内で生まれました。社内の応援を得て会社から承認され、その名も「丸の内15丁目PROJECT.」が動き始めます。まずウェブサイトを立ち上げ、次第にリアルなコミュニティーも形にしていく計画で、プロの味方も得ながら私たちはスタートしました。
ラグビーにはもちろん熱狂的なファンがいますが、当時の日本では野球やサッカーのようにメジャーではなく、まだ人気に火がついている状態ではありませんでした。ラグビーは面白いと語っても多くの人にはピンとこない中で、イベントやコミュニティーに人を集めるにはどうすればいいのか。
その突破口となった考え方が、「にわかファンを大切にしよう」でした。どこのまちにもあるお店のように、普通の人がふと目にして立ち寄って楽しく、そこでラグビーに触れられる機会をつくろう。こうして「ラグビー×まちづくり」の地道なプロジェクトチャレンジに乗り出したのです。
19年の大会開催まで約1年半、3日に1回ほどのペースで180以上のプロジェクトに挑みました。丸の内の飲食店さんにラグビー×食をテーマにした麺類や丼ものをお願いしたり、ラグビーの名シーンで短編映画を制作し、映画館をつくったりもしました。また、丸の内の路面店にたまたま空いた場所があったのでまちの人の交流拠点になるようにと公民館をつくり、コアなラグビーファンもにわかファンも問わず、そして外国人にも楽しんでもらえるよう、京都市の下鴨神社の境内にある、ラグビーとゆかりの深い「雑太社(さわたしゃ)」の神様を分祀(ぶんし)して頂いて、「丸の内ラグビー神社」も建立しました。
それでも大きく盛り上がるという状況にはならなくて、いつも来てくれる熱心なファン以外に、にわかファンが押し寄せるようなプロジェクトには、まだつながっていきませんでした。社内でも「何をやっているんだろう?」と思っていたことでしょう。しかし、「必ず盛り上がるはずだ」と一歩を踏み出しだしたからには信じ抜いていこうと、にわかファンが楽しめる場づくりをみんなで頑張り続けました。長い1年半でした。
楽しむ気持ちが連鎖を生んだ
話題になるような盛り上がりにならない日々でも、人を巻き込むには自分自身が楽しむ気持ちこそが一番大事ではないでしょうか。やらされているのではなく、ワクワクするメチャクチャに面白いプロジェクトだと本人の伝える熱が、声をかけた人に伝わっていくのだと思います。その連鎖が一緒にプロジェクトを推進する人の輪になり、口コミになり、少しずつ話題になるのだと感じます。
ようやくやりきった開催年9月、大会開幕からにわかファンが一気にバーッと盛り上がり、「すごく面白いことをやってるね」「じゃあ丸の内にみんなで行こう」と大きな動きが起きたのです。そのタイミングで社内にも火がつき、弊社の営業がお得意様と一緒に試合を見に行って、本当に一体感が生まれたと聞きました。また、協力してくれたテナントさん、飲食店の方々、一緒に取り組んだ全ての仲間の喜びも伝わってきました。
大会の最後には日本代表選手のパレードが行われ、観客数が5万人を超えてまちを埋め尽くし、丸の内に声援が飛び交ったのです。ビルの窓からその光景を見て、やっぱり胸が熱くなりました。(談)