「初めてに、ひるまない」
高田 晋作が語る仕事----4
スポーツマインドで臨む
チームという思いが人を動かす
現在も多くの方に参加して頂いている当社の「丸の内15丁目PROJECT.」は、東京・丸の内の新しいまちづくりを目指して「まち×ラグビー」という発想で始めました。まずウェブサイトを立ち上げ、さらにリアルな丸の内のあちこちにも飲食店や映画館、公民館、「丸の内ラグビー神社」などラグビーの楽しさが詰まった様々な場所をつくりイベントを企画。全く初めての試みで苦労もありましたが、2019年の国際的なラグビー大会期間中には驚くほどの数のファンが足を運んでくださいました。
当初から、まだラグビーに関心が薄い人たちにも「にわかファン」になってもらいたいと知恵を絞り、店舗やイベントの面白さを伝える過程で「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン」、みんなで一つの目標に向かっていくというラグビーの精神性をメディアで発信し続けました。そんなラガーマンの気持ちを支えるスピリットが、いつの間にか広く人々の心に届いて共感を得ていったように思います。
また、チームスポーツにはワンチームという考え方が根幹にあり、この言葉もビジネスに従事する人を始め日本人には響く要素が強かったのではないでしょうか。それは普遍的で、ある意味理想だと多くの人が感じて、チームスポーツのメンバーのように、一緒になって我々のプロジェクトに参加するという行動をしてくれたのかもしれません。
偶然ですが、昔から三菱地所には「アズ・ワン・チーム」という心構えがあります。私はそこに、仕事とスポーツマインドにはやはり親和性があると感じます。どちらもなれ合いの仲間ではなく、それぞれが自分の持ち場を知り、持てる力や個性を発揮することが大きな目標を達成するには必要だからです。人はみなその人なりの優れた才能や強み、こだわりなどを持っていますから、それが最大化されるように仕事をしてチームに貢献するという働き方が大切だと思いますね。
まず提案をしてみよう
ウェブサイトの「丸の内15丁目」には、日々いろいろなアイデアやご意見が届きます。これは本当にうれしい。イベントなどの告知をすると反応が早く返ってきますし、若い方もよく来てくださる。三菱地所は「堅い」というイメージも強いと思うのですが、新しいつながり方が生まれて少しずつ理解が深まるのは、とてもありがたいことだと感じています。
ひもといてみると、当社は130年も前に日本で初めての本格的な賃貸オフィスのビジネス街・丸の内をゼロから築き、00年にアウトレットという新しい小売り形態を静岡県御殿場市の開業から手掛けて日本の文化に根付かせ、02年には米シリコンバレーから共創の場所としてコワーキングスペースの概念を日本に持ち込みました。今では「日本のアタリマエ」になったことを、時代に先駆けて実現してきたフロンティア精神が背骨になっているのです。まちとラグビーを掛け合わせるという、社員たちの少しとっぴな発想もこの社風に助けられたのでしょう。
もし、会社にとって初めてのプロジェクトを考えついたら、一枚の提案書は出していいと思います。運良くOKが出たら、それを実現する体力と人を巻き込む力と、楽しむ力がいる。私の体験では、うまくいかないことも時間ばかり掛かることも予想以上に多かった。でもひるまないで、行動し続けてみてください。(談)