「人の暮らしを一歩でも前へ」
田中 修治が語る仕事--4
選択を正解にしていこう
努力はダサくなんてない
11年前に30歳で、経営不振に陥ったメガネ小売りチェーンを引き受けました。でも、国内60店だった店舗は今年8月末現在で国内128店、海外185店。諦めずに、リーズナブルで価値のある製品を開発し続けてきて良かったと思います。
そもそも、さして大きくはないデザイン会社を経営していた当時の僕は、メガネに興味もなければ、苦戦している企業を自分が助けるなんてことも考えてもいませんでした。ただ、その60店舗が無くなってしまったらお客さんとスタッフが困るだろうし、もったいないなと感じただけです。でも、軌道に乗せた今になって「いい選択をしましたね」「読みが当たりましたね」などと、何か鼻を利かせて条件のいい仕事を選んだかのように言われることには、すごく違和感があります。
正直に言えばマイナスからのスタートでしたが、僕は若い頃から「選択に意味はない」という持論で仕事をしてきたんです。慎重に割のいいことを選ぶのではなく、どんな条件でも、自分が努力して正解と思えるところまで持っていってみせると。だから、情報をかき集めていい選択をしたがる人にはこう言います。「君が20代で合コンやカラオケをしてる頃、僕は朝まで必死に働いていたから」ってね。
僕が知る限り、今の仕事が嫌になって辞めたいとか、他にいい仕事があるはずだとかという人はとても多い。そうして転職し、うまくいかなかった人も数え切れないほど見てきました。それは進路の選び方が悪いのではなくて、自分のせいかも知れないということに気づいていないからでしょう。例えば大リーグで活躍し続けたイチロー選手は、素質に加えて努力を惜しまなかったから大きな成功を収めたと思います。他の道を選んでいても、きっとそれを成し遂げていたでしょうね。
仲間や同僚を見回してみて、あなたが引かれる人って努力していませんか。それは可能性を育てている人ですよ。
必要とされる仕事を追いたい
出世って何か、と考えたことがありますか。それは肩書が上になることではなく、名が売れることでも稼ぎがすごいことでもない。社会が必要とすることの中心へ向かうこと。僕はそう思います。
ひとまず、現在までの僕は喜んでもらえるメガネ事業を手がけてきましたが、まだまだです。この事業は進めつつ、もっと人の暮らしを豊かにすることを探したいんですね。豊かというのは、新しい知識を提供したり、新しい体験を届けたり、うれしくなる便利な道具を開発したりしてあげるといったこと。そんな未知の仕事を考え始めると、僕は子どもが遊びを探すようにじっとしていられなくなります。
仕事の種類や働いている人の数だけ、それぞれの立場で新しいサービスや便利を生み出すことができる。だから働くことは面白い。無理みたいだからやめておこうか、という状況でも打つ手がゼロなんてことはない。「あいつだったら何とかするだろう」と言われるようになりたいものです。暮らしに目を凝らすこと、諦めないこと、そして努力する自分はカッコいいことを知ってください。(談)