「楽な選択はいけないよ」
森下 篤史が語る仕事--4
「大切」を突き詰めよ
本音を言葉にして力にする
私は、23年前に現在の会社を起こしてから、幾つも従業員の働き方の仕組みを考えてきました。例えば、徹底的に仕事の訓練を受けてどんどん成長したいなら「激流コース」、定時に帰宅して菊に水をやるような生き方がいいなら「菊水コース」。状況が変わればコースを動くのも自由です。また、退職したい従業員も止めないし、何年後でも戻ることができます。定年も自己申告。行きたい部署に異動できるフリーエージェント制も導入しました。
なぜなら、人それぞれの仕事に対する価値観や、人生で起きる事情に合わせて充実した働き方をして欲しいからです。ただし条件があります。それは「自分をちゃんと分かっておけよ」ということ。そのためには望みを言葉にする必要があるんですね。何になりたいか、どうしたいかが頭にあれば、それに関係する事柄を五感が自然に拾ってくる。22歳の青年が「25歳にはペルーのマチュピチュ遺跡に行きたい」と書けば、自然にマチュピチュという言葉に目が行って情報が集まってくるものです。
そんなふうに神様が自分の人生を応援してくれると思って、目標を具体的に書くに限ります。つまり単に「立派な人間になる」だと通じない。でも「3年間は新聞配達をする」なら分かりやすい。「困難に耐えられる人間になる」ではあやふや。期日や実行する内容を記述し、場所や人の名前など固有名詞まで記してイメージを明らかにしておくのです。自分でシナリオを書いて主人公になれるように。
今の社会は、仕事で成功しなければとか、家庭と両立しなければとか、様々なプレッシャーにあふれているから振り回されて苦しい人も多いでしょう。でも、外からの情報に任せて日が過ぎてしまい、思わぬ結果になったら残念です。成功の基準は人の数だけ違っていいのだから、自分なりに掘り下げて考えよと私は言いたい。
さあ、行動に移そう
それぞれの人生の価値観が違っても、みんなが気持ち良く働ける職場とは何か。これは、「マイナスの言葉」がほとんどなく、いい人間関係が保てている場ではないでしょうか。例えば「暑くて嫌だなあ」はマイナス発言だけど、「長い梅雨が明けて、これからはガンガンいけますね」と言い直すと気持ちが違います。私はこういう言い換えの実例集まで作って、日本全国各店の朝礼で読み合わせて練習してもらっています。
自分の目標を書くのと同じように、みんなで大切な言葉を声に出す効果は大きい。職場で悪口を言わない、沈む空気を作る愚痴を言わない。幸せな仕事環境は、こういう基本的な行動に支えられていると思います。小学生じゃあるまいしとか、他社の人に見られたら恥ずかしいとか、そんなことは問題じゃない。実際に働くことがうれしくなるというゴールを目指しているのですから。
新型コロナウイルスによって誰もが仕事に大きな影響を受けました。面倒だと感じていた人間関係でさえ、案外大切だったと気づいたかも知れません。自分らしい人生目標、希望を新たにして、行動して欲しいと願っています。(談)