仕事力~働くを考えるコラム

就職活動

「直感を掘り下げよう」
横川 正紀が語る仕事--2

就職活動

感動を仕掛ける喜びへ

いつか自分らしさは顔を出す

子どもの頃から得意と言えるものが見つからず、人と自分を比較しているばかりでした。インテリアデザインに少し興味が湧いて建築学科のある高校に入学したものの、想像していたデザインの授業はなく、通うのがつまらなくなって一年だけと父に頼み込んでオーストラリアの小さな町の高校に留学します。ここで級友たちが興味を持って「日本っていいね」と言ってくれたことで、日本も、自分も、学校も嫌いだと思っていた僕が「ないものねだり」の自分に気づいたのです。
 
大学は、京都の美術大学の建築学科へ。昼は学校、夜は繁華街・木屋町のバーで朝6時までアルバイト。夜中のバーにはミュージシャンや飲食店の同業者、祇園の芸妓さんなど色んな人がやって来ます。そこでクラブイベントをやっている仲間と出会い、僕は一緒に企画を立てるようになりました。イベントの実現には毎回協賛金集めが必要ですが、冠スポンサーになってくれるような大手スポンサーはまずなく、1軒3万円ずつを数十軒から募るために街の商店街を巡り歩くのです。僕はその役割となりました(笑)。
 
京都は街のサイズ感がちょうどよく、この協賛金集めのおかげで飲食店や美容室など多くの店主を訪ねるうちに顔見知りが増え、人を紹介してもらえるようになっていきました。2年ほどで、京都人ではないけれど「京都の人」と言ってもらえるようになり、やっと自分らしくなれた気分でした。僕は、先輩や仲間たちとデザインしたりDJを探したりして、一緒に作り上げていった企画に、みんながワアッと盛り上がっているのを見るのが本当に楽しかった。自分が仕掛けたことに人が共感してくれる、感動してくれる、その瞬間が好きなんだと実感し、「あ、何かこれならできるかも」と手応えをつかんだ体験でした。
 
そういう意味では現在もずっと同じですね。新しいお店を開く時、直前まではドキドキしますが、お客さんがうれしそうな声や笑顔を見せてくださるあの瞬間に、「ね、でしょ!」と心の中で手をたたいています。

違和感もアンテナだ

人々が共感してくれるイベントの企画にやりがいを見いだし、真夜中でも活動する学生でしたが、大学は何とか卒業制作までこぎつけました。ただ、建物の造り方を学ぶ建築学は、なぜ表層の形ばかりを追い求めるのか、建物とはそこに暮らす人や街のために造るものではないのか、そんな違和感をずっと拭い去ることができなかった。だから僕は、卒業制作でまっさらな構造体だけ出し、生意気にも「中身無くして建築無し」みたいなことを言ったんです。
 
このまま自分は建築をやりたいのかモヤモヤしていたのですね。そこでゲスト審査員の建築家・安藤忠雄さんが苦笑して「君は建築家をやめた方がいい」、そして「中身をやる側になって、君が建築家に注文すればいいじゃないか」と言ってくださった。ただその時は、卒業できるかどうか不安でその言葉を深く受け止めていませんでした。卒業後はインテリアの店に就職。でも、振り返れば現在はその通り、暮らしに寄り添う仕事をしている。どこかで安藤さんの言葉が背中を押してくれていたのだと思います。(談)

よこかわ・まさき ●ウェルカムグループ代表。1972年生まれ。大学卒業後、2000年ジョージズファニチュア(現〈株〉ウェルカム)設立。食とデザインの2軸で、「ディーン&デルーカ」「シボネ」など良質なライフスタイルを提案するブランドを多数展開。また商業施設やホテルのプロデュース、官民の枠を超えた街づくりや地域活性のコミュニティーづくりへと活動を広げる。武蔵野美術大学非常勤講師。著書に『食卓の経営塾 DEAN & DELUCA 心に響くビジネスの育て方』がある。
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