政治って?① 学校の中にだってある
編集委員・松下秀雄
政治って、なんでしょう。
政治家が、国会議事堂あたりでやっていること?
もちろん、それも政治。
でも、それだけでしょうか?
このあいだ、10代の若者たちが、もっと身近にある「政治」について話しあいました。学校の校則です。
「ぼくらの対話ネット」のメンバーは、全国の高校生や大学生ら80人余り。毎日のように、時事問題など議論のテーマを設け、関心のある人が、スカイプや、フェイスブックの音声通話機能を使って話しあっています。
6月24日の夜は校則がテーマ。51歳の私も参加し、スマートフォン越しに、同時に5人の若者と話しあいました。
髪を束ねるゴムの色
福岡県の高校3年生、安永彩華さん(17)が、中学校での体験を紹介しました。
中学では、生徒総会で校則の改正を話しあったそうです。その結果、短めの靴下をはくことなどが認められたと言います。
うん、自分たちのルールを自分たちで決める、それって民主主義の実践ですよね。意見を出しあい、折り合いを探る作業は政治そのもの。良いことをやっているなと、私は思いました。
ただ、聞いていると、生徒総会の結論を、職員会議が拒むこともあったそうです。髪を束ねるゴムの色がそうでした。「黒か紺」に限られていたのを、「茶色も加えよう」と話しあいましたが、認められませんでした。「黒や紺に比べて、茶色はベージュからこげ茶までバリエーションが多く、線引きが難しい」が理由だったそうです。
ふーん、ベージュじゃいけないのかな? そもそも色を決める必要があるの? 私が戸惑っているうちに、メンバーから質問が飛びました。
「茶色も認められるよう、闘わなかったの?」
安永さんはこう答えました。
「内申を握られているからね。通知表や内申点に響くから、できなかった」
なるほど。学校と生徒の力関係が、意見をいうのを難しくしているということでしょうか。
問題は「力関係」
安永さんは続けます。
「日本では、規則に疑問をもたなくなる教育をやっていると思う」
うん、そうですね。国連の「子どもの権利委員会」は、日本で学校や社会のルールをつくる時、子どもの意見が尊重されないのを心配している、という趣旨の指摘をしています。子どもは決められたルールに従っているということです。
理由はたぶん、学校と生徒の「力関係」だけじゃないでしょう。子どもたちを守ろうとするおとなの「親心」。トラブルやクレームを避けようとする「心配性」。それらが入り交じって、生徒たちが意見をかわし、みずから決める機会を奪っているんじゃないでしょうか。そんな政治体験、民主主義の体験をしないまま、おとなになる人を増やしているのでは。
それが、「政治は遠い」とか、「言っても無駄」という感覚につながっているんじゃないんでしょうか。
「対話ネット」の田中駿介共同代表(18)も、次のように話しました。
「いちばんの主権者教育は学校の民主化ですよ」
たとえば、こんなこと
もちろん、いまから学校の民主化にとりくんでも、この参院選の投開票日には間に合いません。さて、何をすればよいのでしょう。主権者としてふるまうために。
たとえば、こんなのはどうでしょう。
校則とか授業のあり方とか、身近な課題をひとつ選び、それと政治のかかわりを考えてみるというのは。どうしてこんなふうになっているのかを調べ、自分の体験と重ね合わせる。できれば、だれかと話しあう。
そうすれば、身のまわりから、政治を発見できるかもしれません。
「ぼくらの対話ネット」への連絡は田中さんのメールアドレス、magokoro.0709@gmail.com へ。