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「時は金なり」イチ押し
折々のことば連載100回までのなかから「イチ押し」のことばを選ぶキャンペーンを2015年に実施し、7045票の投票がありました。普通の人がもらした一言、哲学者の人生訓、詩歌の一節まで、多様なことばが上位に並びました。
1位(米国の政治家・実業家ベンジャミン・フランクリンの「時は金なり」)・2位(関西での言い伝え「アホになれんやつがほんまのアホや」)は、コラムを紹介するテレビCMに登場した。「時は金なり」は、一般的には「時間を無駄にするな」という警句として有名だが、時は人に与えるものだと考えれば、「気前よくなれ」という意味にもとれると紹介した。
市井のことば上位は「意外」 鷲田さん
たくさんの方に投票をしていただきうれしいです。
有名人ばかりではなく、市井の人のことばが上位に入っています。意外でした。語り手が誰かよりも、ことばそのものを見てくれているんだなと思いました。
上位のことばの中に、「人と違う」(3位)、「失敗」(7位)、「めいわく」(8位)という表現があります。想像ですが、「人と違わなくてはいけない」「失敗や迷惑はいけない」と普段から思っていて、こうした表現に敏感になる人が多いのかもしれません。教育のことばが割と上位に多いのには、子育て真っ最中の人が悩んでいるのかな、と感じました。
僕が一つ選ぶとしたら……みんな大事なことばばかりだから難しいですね。20代の頃に衝撃を受けた哲学者のキルケゴールやパスカルのことばは、既に僕の骨格みたいに当たり前のものになっています。比較的最近知ったなかでは、たとえば、行軍する兵隊をアリの行列のように描いた版画家・彫刻家の浜田知明さんの「兵隊は地図を見たことがありません」でしょうか。きついことばです。
(2015年12月1日付本紙から)