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夏目漱石3516

山路を登りながら、かう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。兎角に人の世は住みにくい。

『草枕』

紫式部3157

いづれの御時にか、女御更衣あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。

『源氏物語』

司馬遼太郎1472

まことに小さな国が、開化期をむかえようとしている。その列島のなかの一つの島が四国であり、四国は、讃岐、阿波、土佐、伊予にわかれている。

『坂の上の雲』

宮沢賢治1275

雨ニモマケズ　風ニモマケズ　雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ　丈夫ナカラダヲモチ　慾ハナク　決シテ瞋ラズ　イツモシヅカニワラッテヰル

『雨ニモマケズ』

芥川龍之介1149

或日の暮方の事である。一人の下人が、羅生門の下で雨やみを待ってゐた。広い門の下には、この男の外に誰もゐない。

『羅生門』

松尾芭蕉805

月日は百代の過客にして、行かふ年も又旅人也。舟の上に生涯をうかべ、馬の口とらへて老をむかふるものは、日々旅にして旅を栖とす。

『奥の細道』

太宰治754

メロスは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。メロスには政治がわからぬ。メロスは、村の牧人である。

『走れメロス』

松本清張673

安田辰郎は、一月十三日の夜、赤坂の割烹料亭「小雪」に一人の客を招待した。客の正体は、某省のある部長である。

『点と線』

川端康成595

国境の長いトンネルを抜けると雪国であつた。夜の底が白くなつた。信号所に汽車が止まつた。

『雪国』

三島由紀夫542

永いあひだ、私は自分が生れたときの光景を見たことがあると言ひ張つてゐた。

『仮面の告白』